「声出しOKなのになんで声出せねえんだし」
ぐさりと、言葉の槍が突き刺さる。深く刺さった槍は、びくともしなくて、簡単に外せはしない。
「声、出したかったのにな……」
ぐっと、重い鉛が圧し掛かる。身体を押しつぶすような鉛は、どかせなくて、溢れそうな感情を抑える。
自分で決めたことじゃないか、と言い聞かせる。覚悟を決めて、その選択をしたはずなのに、受け入れてもらえるのかどうか不安しかない。どんな言葉も受け止めようと心に刻んでいたけれども、世の中そう簡単にはいかない。
「”かんちがい”も甚だしい」
とあるやつが、鼻で笑った。
ゆらり、と胸の内に火が灯る。
かんちがいだって?
そうだよ、何が悪いんだ。貫き通したい想いが、私にだってあるんだ。守りたい想いが……あるんだ。
だって、このままじゃ終われないよ。きちんと決着がついてないんだ。あいつと、決別したいんだ。
「”かんちがい”だっていいじゃん」
声が聴こえる。私が大好きな声だ。大好きな笑顔だ。背中を押してくれる、私の仲間たち。そうだよ、だってうちらって……世界一最強じゃん。最強で、最高な景色を、一緒に探そうじゃないか。
はじめに
皆さん、お久しぶりです。さらいんです。
最近は、専らブログを書く時間と機会が減ってしまい、中々言葉を紡ぐことがなかったのですが、ようやく少し落ち着いてきたので、カタカタとキーボードを鳴らしています。流石に、ノールックキーボードカタカタ(ブラインドタッチ)はできない人間なので、自由気ままに書いております。
今回書かせていただくのは、「朱演2023 LIVE HOUSE TOUR『かんちがいの冒険者』」のライブレポートになります。
私は、ツアーには4月30日の川崎公演からの合流とありますので、その2公演のお話を中心に、言葉を紡いでいきたいと思っています。ですが、まずは……この本編に行く前に自分語りをさせてもらいます。私にとっては、ここで書かなければもう話すことはない記憶ですので、もしいち早く本編が読みたいよ、自分語りなんか興味がないよ、という方は、目次から飛んでいただけますと幸いです。
もう一度言わせていただきます。前半は、自分語りです。本当に。ご注意ください。
それでは、ほのぼの冒険記「かんちがいの冒険者」の始まりです。
斉藤朱夏さんって……
先程も申し上げました通り、まずは自分語りのターンとなります。別にいいかな……という方は、スクロールしていただくか目次から本編まで飛んでいただけますと幸いです。
私が、なぜこんなにも大切に言葉を発信するのか、というと単純に「楽しかった」のひと言で終わらせたくないからです。あくまでも自分に課しているルールのようなものです。何か感じたことを表現したい、伝えたい、届けたい。その一心で、ずっと綴ってきました。
そんな私の言葉を、斉藤さんは「好きだから」と言葉を掛けてくださいました。たった70秒という時間は、人生で二度は経験できない70秒になったと思います。
自分の言葉に自信を持てたのは、つい最近です。今までは、やはり目移りしてしまうことが多かったので、本当に心から救われました。オンライントークが斉藤朱夏さんと話せる最初で最後の機会だと思いました。そのつもりでした。しかし、更に予想だにしないことが起こります。
不思議なメールが一通、私の元へと舞い降りてきました。
「【斉藤朱夏】4th SIngle「僕らはジーニアス」発売記念ミート&グリート@神奈川/ご当選のお知らせ」
思わず目を疑いました。何度見返しても、当選という文字がそこには載っています。なんとなく応募したハガキの存在を思い出したのですが、各会場10名しか当たらない狭き門を潜り抜けてしまったことに驚くと同時に、奮えが止まりませんでした。
この時の私は、斉藤朱夏さんのオンライントークに加えて、伊波杏樹さんのオンライントークも当選していたため、流石に明日の自分の命を心配しました。いつもより安全に過ごそう、と臆病になっていたほどです。
迎えた当日。結局最後まで何を話そうか決まらず、悶々と気持ちを抱えながら川崎へと向かいました。私は、ツアーに合流したのが川崎からでしたので、今日履いていくコンバースにハッシュタグをつけて、SNSの海に流しました。
川崎駅は、とても広かった(田舎民発言)ように思えます。地下街が深く広がり、会場近くは、ちょっとしたストリートになっていて、コンセプトにあった街並みが広がっていたように思えます。飲食店の他、アミューズメント施設も並び、遊びには困らないとはこういうことか、と勝手にその雰囲気を味わっていました。
物販を買うために、少し早めに会場に着いたはずなのですが、既に多くのファンが並んでいました。多くの方が、この朱演に参加しているのか、と武者震いが止まりませんでした。ですが、列に並んでいても、物販を買っても、ご飯を食べていても、考えることはミーグリで何を話すかということでした。
迫る集合時間の13時15分。気合を入れるかのようにトイレへ駆け込んだのですが、鼻のムズムズ感が突如襲います。咄嗟にペーパーで抑えると、真っ赤に滲んでいきました。興奮したのでしょうか、変な意味は全くなく、純粋に身体が喜びを爆発させた印だったのかもしれません。
ようやく辿り着いた集合場所。何度息を吸って吐いたか分かりません。きちんと自分が呼吸をしているのかも知りません。手は冷たくて、心臓は爆音を響かせているこのコンディションは、最高とは程遠いものです。
スタッフさんにメールの確認と、身分証明書の確認をしてもらい、ついに会場へと足を踏み入れます。誰よりも先に入れたミーグリ参加者の特権でしょうか。ファンの方から贈られたフラワースタンド、楽屋花の数々を見ることができました。
待つこと数分か、数秒か。とにかく時間の流れがゆったりとしていたようにも思えます。選ばれし9名の同志に、どうやら話す内容は聞かれるようで……なんか恥ずかしいですよね。
会場のロッカールームあたりで待機をさせられ、その時を待ちます。「それでは斉藤朱夏さんがいらっしゃいます。拍手で迎えましょう」とスタッフの声が掛かり、ドアが開きます。
温かい拍手に迎えられ、笑顔の斉藤さんが顔を見せてくれました。普段は、ライブの衣装や私服を身に纏う姿しか見てこなかったのですが、ライブ前ということもあってかとてもラフな格好。それこそリハーサルで着るようなジャージ姿だったのが新鮮でした。
一人ひとり、線のところまで出て話すのですが、いかんせん目と鼻の先に斉藤さんがいるという近さです。え?コロナとかって……あ、5類……あ、えと、その近い……あ、マスクしてるから平気……と、どうにか自分の気持ちを落ち着けようと言い聞かせます。会話を上手く楽しむ人、緊張から言葉が詰まる人、様々なファンの方の対応に、真摯に向き合うその姿が、斉藤さんのオープンな人格でもあったと思います。
そして、ついにその時が来ます。
「お久しぶりです!朱夏さん。さらいんです」
まるでこの間通話をして、遊ぶ約束でもしたかのような友達オーラを出しつつ、内心緊張しながらも言葉を発した自分を褒め倒したいです。よくやった、俺。もう十分だ、とそこで気が楽になりました。
「うわぁ!元気?」
斉藤さんも、同じようにフランクに返してくださったのですが、ここで衝撃が走ります。斉藤さんが私の左腕?二の腕?肩?辺りを、ポンポンと触ったのです。え、いや、これ、おさわり禁止でしょ?っていう声と、触るなあ!(失礼)という声と、待って待って!という声が、一気に脳内を駆け巡ります。
おかしい。何かがおかしい。こんなこと、他の人たちはされなかったじゃないか。なぜ、どうして?と自問しても、誰も答えられるはずがありません。そこから私の記憶は、吹き飛びます。
「はい、あの……この間、オンラインサイン会で『私さらいんの言葉大好きだから』って言ってくださったじゃないですか」
ひとつだけ、この話だけはしようと心に決めていたことは伝えよう、と目標にしていました。
「その言葉が支えになって、自信をもって〇〇に立っています」
この後に何かを言われた気がするのですが、テンパりすぎてほとんど覚えていません。オンライントークで贈ってくださった言葉への感謝を伝えることができて、凄くホッとしました。言いたいことは言えた。……やった……と心の片隅では思えた気がします。〇〇には、職業の話が入ってしまうのでここでは伏せさせていただきましたが、本当に自信をもって自分の言葉を発言できている気がします。
さて、ここからが問題です。ノープランで来た私は、何を話せばいいのか分かりません。なので、取るべき行動はただ一つ。
「私ばっかり喋ってばっかで、今度は朱夏さんの話を聞きたいなって思っていて……」
自白です。素直に開きなおり、今の気持ちを赤裸々に語るのが一番だと思いました。それに、何故か斉藤さんとなら話題がなくとも喋れるような自信がありました。もちろん自分の職種が、複数人の人と共同生活をするというのもありますが、斉藤さん自身もトークが上手い方だと私は思っていたので、不安はありませんでした。
「私の方が喋ってばっかで、みんなに聞いてもらってばっかりだよ」
そうやって笑う斉藤さん。斉藤さんの「言葉」も私は大好きなので、「そんなことないです」って返した気がします。気がするだけです。そういう謙虚なのか、真面目なのか、斉藤さんの人柄を感じた返事だった気がします。
ここで衝撃が走ります。朝ツイートをしたと先程話しましたが、実はそのツイートとは別で、ハッシュタグをつけずに川崎から参加しますというツイートをしていました。
つまり、斉藤さんは自分が思っている以上にファンのツイートを見ている、ということを知りました。迂闊に変なことも話せないじゃないか、という気持ちとこんなにも見てくれているんだという嬉しさがありました。
「はい!私今日前の方なので、見つけてください!」
その反応に喜びを爆発させた私は、出しゃばった発言をしました。見つけてくださいって何よ、あんた。とツッコまれそうですが、オタクはやっぱチョロいですよね……。
「見つける!見つける!絶対見つける!」
多分こんな会話をしたと思います。その後も何か話したはずなのですが、記憶に残っておりません。ただただ充実感と幸福感に包まれていました。他の参加者の皆様も、それぞれの想いを伝えていました。北海道から来た、富山県民同志の会合、ぬいぐるみ、衣装をイメージしたライブ参戦コーデ……などなど、聞いているこちら側も嬉しくなるような話ばかりでした
あの空間は、ここにいる人たちしか味わうことができない。二度とない、あの景色と音を刻むことに必死でした。
多分これが……斉藤朱夏さんの思い描いた世界なんだと思います。この距離感で、数少ない”キミ”との時間を大切にしてくれる。そんな斉藤さんの心が表れているようでした。
斉藤朱夏さんって……ほんと、ずるいです。
拍手で斉藤さんの背中を見送り、外へと出ると既に入場待機列が形成されていました。ですが、未だに夢見心地な私はその輪に入る気にもなれず、一歩ずつ地に足をつけて歩きました。そうしないと、どこまでも飛んで行ってしまいそうなくらいふわふわと浮足立っていたからです。
まだここで終わりではありません。ライブが本番ですからね。
目の前の”キミ”
ここからはライブパートを綴らせていただきます。昼の部の整理番号は、20番台。確実に女性エリアの最前が取れる、と踏んだ私は、荷物をささっと預けて会場内へと入ります。
センター前か、お立ち台か。その2つの選択肢を優雅に選べるほどに、余裕がありました。迷った末にお立ち台の前を選んだのですが、先に入っていたお姉さんと目が合います。
「そっち選んだんだ」
「いや、迷いますよね……」
「こっち来る?全然真ん中、譲るよ?」
なんて素敵なお姉さんなんだ!と、優しい声掛けに乗り、私は女性エリアのセンター寄りの位置で見ることができました。そのお姉さんと開演時間までずっと話していました。Aqoursのこと、好きになったきっかけ、住んでいる街のこと、仕事のこと。
その方は、人を指導する立場にいるらしく、今の若い人に対してもとても寛容的な方でした。力で抑えるのではなく、「逆に学ぶことがあるのよね」と話していたのですが、私はその方が眩しく見えました。立場に驕れるのではなく、何からも吸収しようとする考えが素敵だと思いました
SNSはやられていないようでしたが、不思議とまた会えるような気がします。この場所に遊びに来ればまた、いつの日かのお礼ができたらいいなと思っております。
縁を結んでくれるのも、斉藤さんだと思います。お姉さんのおかげで最高の景色が見れました。ありがとうございました。……届くといいな。届きますように。
木立に包まれた幻想な雰囲気が漂い、スモークが焚かれ、木々の葉っぱが擦れる音、生き物の鳴き声が響き渡ります。バンドメンバーが舞台袖から登壇し、会場は拍手で包まれます。万雷のよう鳴り響く音に導かれたのか突如雷鳴が轟き、そこにはもう斉藤さんがいました。
まるで、天候が荒れようとも突き進む冒険者のよう。
開幕に持ってくる楽曲というのは、ライブの始まりを象徴するといっても過言ではないと思います。だからこそのインパクトに残る、ライブを盛り上げる一曲を持ってこなければなりません。
そんな勝負曲として持ってきたのは「ノーサレンダー」でした。とにかくイントロから疾走感のある楽曲。サビでジャンプするのが気持ちよくて、いつも笑顔全開の斉藤さんに引っ張られているような気がします。
序盤に私は斉藤さんに指を刺されました。完全に狙って打ってきたであろうファンサに崩れ落ちたのは、きっと斉藤さんしか知らないでしょう。それはもう綺麗に、私はう……と電撃が走ったかのような衝撃を受けました。
「月で星で太陽だ!」では、「ノーサレンダー」で築き上げた勢いを殺さずに、更に盛り上げていく斉藤さん。彼女の溢れんばかりのエネルギーをぶつけるように、会場も声は出せずとも大盛り上がり。
月にも、星にも、太陽にも負けない輝きを放つ彼女の姿に、目を奪われてしまう自分がいました。
続いては「親愛なるMyメン」を披露。待て、待ってください。
どこにその体力が残っているのですか?斉藤朱夏さん七不思議(そんなものはない)のひとつ「斉藤朱夏さんの体力お化けは何なのか?」という疑問がまた浮き彫りになってきました。
ふんわりとした日常に溶け込む歌で、フレーズもみんなで楽しめるような言葉が入っており、「揺れろー!」の掛け声に合わせて、左右に揺られたり、クラップがとても楽しい1曲ですよね。
さて、3曲もやったしそろそろMCかなぁ……なんて考えていた私の鼓膜に鳴り響いた「パッパッパッ」の声。
一緒に踊ろう!とほぼセットリストに組んでくださっている「パパパ」に、もう私は笑いが止まりませんでした。
いや、この人、休ませる気ないやん!
良い意味ですよ?勿論。時期はまだ4月とは言え、このライブハウスは夏でした。この季節にあんなにも汗をかいたのは初めてです。
でも不思議と辛くはない。辛くはないんですよね。何故って、そりゃあ……目の前の"キミ"が楽しそうなんだから。
"キミ"へ届け
MCでは、いつもの斉藤さんが戻ってきましたね。あれだけ遊んでいたはずなのに、そのことを微塵も感じさせない満面の笑顔。惚れないわけがないです。
次のパートは、大切な誰かへと贈る歌のようにも思えました。「恋のルーレット」は、その楽曲名通りいじらしくも愛らしい歌い方と表情に、ときめく人も多かったのではないでしょうか?
これまたクラップがとても楽しい曲で、何度も披露されてきているのか、会場は何も言わずとも揃った拍手になるのは凄いことですよね。
そして「シャボン」は、私が斉藤朱夏さんを強く意識した楽曲でもあります。意識するという表現は若干違うかもしれませんが、「あ、斉藤さんってそんな表情も見せるんだ」と思えた瞬間でもあります。
大切な誰かを、大切な時間を思う。そんな「シャボン」という楽曲のもつ儚さ、シャボン玉がいつか弾けて消えてしまうことへ重ねて歌う斉藤さんの姿が、ずっと脳裏に刻まれているのです。
シャボン玉のように、私の目から頬へと流れていった何かが弾けていったような気がしました。
このパートのラストを飾ったのは「セカイノハテ」でした。選ばれたのは、ほにゃららでした……みたいなノリで書いてますけど、そういう意図はなく、単純にこの曲は私の社会人1年目を救ってくれた曲なんですよね。
大丈夫 大丈夫
神様よりも自分信じて
と歌う斉藤さん。自分の胸に手を当ててから、前へと突き出すこの曲がもつ力に、ずっと背中を押されてきました。
だからこそ、未だにこの曲のイントロが流れると「うわぁ……」と声もなく多動してしまう自分がいます。(怖すぎる)
イッパイイッパイアソボー!
MCを挟んだ上で、続いて始まったのは振り付け講座。このツアーで「最強じゃん?」の振り付けがついたのは皆さんご存知だとは思いますが、初めてこのツアー参加の方のためにもこうやって講座を開いてくれるのは凄く有難いですね。
私も事前知識としては頭に入れてはいるものの、やはり実践経験がないので不安はありました。こうやって一緒に練習が出来るのは、不安を期待へと変えてくれるものです。
「だってウチらって、最強じゃーん!」から始まるこの楽曲。先日『summer night party shuka saito × MANGART BEAMS』でもミニライブとして披露されていましたが、この掛け声があると本当に何でも出来そうな気がして、力が湧いてきます。
あとは、もう振り付けがシンプルで楽しい。この一言に尽きます。「え?振り付け?」「無理無理できるわけないよ」って方でも、大丈夫。出来ます。私も出来たので!
気になる方は、斉藤朱夏さんの公式ついっ……失礼しました、公式X(Twitter)を見ていただけると大丈夫だと思います。
世界一最強な彼女と、最強な私たちとで熱いライブを作り上げませんか……?
畳み掛けるかのように「ゼンシンゼンレイ」を歌い上げる斉藤さん。その文字通り、彼女はライブハウスをゼンシンゼンレイで楽しみ、ゼンシンゼンレイで盛り上げ、ゼンシンゼンレイで遊びます。
だから、私たちも一緒に遊びたくなってしまう。
人を惹きつける、導くというのはカリスマ性が必要なのかもしれません。凛としていて、毅然とした態度で、冷静に対処する。その力があるからこそ、ついて行きたいと思う場面もあります。
それと同じくらい何事も楽しんでいる、誰よりも楽しんでいる人がいると、不思議と惹き付けられる経験はありませんか?
それが、斉藤朱夏さんです。
ライブハウスツアーを、この瞬間を、誰よりも楽しんでいるからこそ、私たちも楽しく遊んでしまう。
そんな斉藤さんともっともっとやりたいこと、したいこと、ありますよね?
じゃあ、それはもう「イッパイアッテナ」ではしゃぐしかないんですよねぇ。ひたすらにジャンプするのが堪らなく楽しい。疲れてるはずなのに、何故か跳びたくなってしまう。
まるで斉藤さんが「イッパイイッパイアソボー!」とでも言っているような気がして、遊びたくなってしまうんですよね。
ステージ上で思いっきり身体を動かす彼女をずっと見ていたくて、同じように走りたくて……でも時々無理しそうになる。
そんな時に、斉藤さんは「もう無理、でも走る」と声を上げてくれます。どん底にいようが、どんな困難が待ち受けていようが、走り続ける。
ステージ上で、打ち砕かれたかのようにしゃがみ、落ち込む姿を見せながらも、必死に前を向きがむしゃらに歌う姿は、見る人全てを惹き付け、力を与えてくれます。
「止まらないで」と、そう歌にしてくれます。斉藤さんからのメッセージが、強く強く心に響いて……あぁ、またひとつ自分は前を進む勇気を貰ってしまったような気がします。
心にそっと灯火をつけてくれるその歌声に、私はずっと……恋焦がれているのかもしれません。
水分がかなり持っていかれましたね。息もあがり、汗が頬を伝います。
さて、そろそろ休憩かと思いますよね?
いいえ、斉藤さんはこれまでが準備運動で、これからが本番です。追い打ちをかけるかのように銅鑼がステージへと出てきます。「あ、お疲れ様です」と何故かその運んできたスタッフに声を掛ける様子が見られ、和やかな空気が漂います。
ドーン!と大きな銅鑼の音から始まる「僕らはジーニアス」は、『斉藤朱夏─朱演2022“くもり空の向こう側”─』ではサプライズでの新曲として披露されましたね。
イントロから、拳を前へと突き出す強気な斉藤さんが見られたり、サビでは掛け声に合わせて全員でジャンプするポイントも楽しい楽曲だと思います。
ヘイ やりたいようにやろうぜ
僕らは誰もがジーニアス
この後のMCで、斉藤さんは「この銅鑼をみんなが叩いたら面白そうじゃない?」と話していた記憶があります。いや、もしかしたら生放送だったかもしれませんが、そういう"キミ"と出来ることを全部考えてくれる彼女の優しさに、私はまた心が温かくなるのです。
約束の歌をここに
この時何を語っていたのか、自分が何を思っていたのか。今となってはあまり覚えていません。ですが、この「ハイタッチ」という曲で見せてもらった景色は確かに覚えています。
斉藤朱夏さんから贈られたエール。それは、ハイタッチのポーズ。手を差し出して、ここにいる、今この瞬間を共有してくれる"キミ"と作り上げた大きな波。
その波は、私の心のモヤモヤを攫っていき、爽やかな音を運んでくれました。丁度この頃、私はあまり職場で上手くいかず、悩むことが多かった時期でした。
詳しくは話すことは出来ないのですが、この「ハイタッチ」のおかげで、心底救われました。
でもね 送らせて僕からのエール
ほんのささやかなおまじない
おまじないだなんて彼女は言いますが、そのおまじないが、私にとっては大きな魔法に変わっていたんですよね。
不思議ですよね。救いってほんのちょっとあればいいって。そのほんのちょっと、ほんのささやかってのがまた良くて。
これがもしいっぱい!だとか、沢山!だとかっていう話であったら、「いや、ちょ、あの、そんなに……」みたいに謙遜してしまいそうで。日本人、遠慮しがちな所が多いですからね。
だからこそのこの距離感、共有できる小さな言葉が、あの当時の私を救ってくれました。
本編のラストを飾るのは「声をきかせて」でした。その言葉の通り、私たちの声は斉藤さんには届くことはありませんでした。なぜなら、声出しが出来なかったから。
この4月は、声出しがOKのライブも別界隈ではありました。当然、声出しが出来るものだと思うことでしょう。
それでも敢えて……斉藤さんはやらなかった。それは、彼女がMCで語った想いに全て詰まっていたと思います。
「始まりのあの場所で、私は声出しを解禁したい」
言葉は違っていたかもしれませんが、その想いは読者の皆様に伝わるでしょうか。始まりのあの場所というのは、東京・TSUTAYA O-EASTのことです。ツアーの初日、斉藤朱夏さんの誕生日に行われるライブ会場となるこの場所は、2019年11月7日(木)に初のソロワンマンライブ「朱演 2019『くつひもの結び方』」を行った場所です。
「その公演の後に……声を奪われました」
思うようにいかない日々。声を聞きたいのに、聞くことを許されない。やりたいことも、したいことも満足に出来ないもどかしさを抱えながら斉藤さんはここまで走ってきたことを吐露しました。
その表情には、寂しさ、悔しさ……様々な感情が乗っていたようにも思えます。
だけれども、その声出しのタイミングを自分の始まりと重ねることで、もう一度始めたい。ここから……という彼女の想いがあったんだと思います。
一個人の考えなのですが、なんで「かんちがいの冒険者なんだろう」ってずっと考えていて。「勘違い」というフレーズは、「僕らはジーニアス」にも入ってはいますが……私は、これはいい意味での勘違いなのかなと思いました。
「声出しOKなのに、何故声出しをさせてくれないの?」という疑問が沸き起こるのは確かなことです。ただそこを、敢えて……理解した上でやらなかった。
それは、勘違いでもなんでもなくて「かんちがいだっていいじゃん。」って失敗を笑う斉藤さんがいるように見えて。いや、失敗でもないはずなんですよね。だって「声出しは、ツアーからにしたい!」という彼女の芯が通っているわけですから。
だから、このツアーは斉藤さんにとっても、私たちにとっても冒険者としての旅路の途中なんだと思いました。まだまだ私たちは、道半ば。夢の途中を歩む1人の若人ですから。
そのMCの言葉を裏付けるかのように歌う「声をきかせて」は、あまりにも物語として繋がっていて。あぁ、早くその場所で声を出したい!と想いは増していくばかり。
出会ってくれて ありがとう
そばに居てくれて ありがとう
信じてくれて ありがとう
宝物くれて ありがとう
「ありがとう」と視線を向けながら歌う斉藤さんに、こちらこそありがとう!の気持ちを届けたくて、クラップをする手に力が篭もります。
少しでも、ほんの少しでも……彼女に感謝の気持ちが届きますように。彼女の思い描く夢が、形となりますように。
今はただこの景色を、この音を、空気を……噛み締めさせてください。
終わりに
最後の一音まで、鼓膜に焼き付けようとしていた姿がずっと残っていて。あぁ、またひとつ大切な宝物が増えてしまったなぁ……と、じんわりと胸に手を当てていました。
斉藤さんらしい言葉や声、想いの表現の仕方。それら全部がストレートに突き刺さって、私も顔がぐしゃぐしゃだった気がします。
終演後、気の合う友人が来てくれて、お互いに写真を撮ったことも懐かしいです。とにかく……とにかく楽しかったの一言に尽きます。
声が出せなくても楽しいライブなのに、声が出せたらどんなライブになってしまうんでしょうか。
ちなみに、この記事は「朱演2023 LIVE HOUSE TOUR『愛のやじるし』」の初演、東京公演終了直後に書いています。
ですので、私は……いや、ここでは多く語らないこととしましょう。
ツアーが終わるまでは、セットリストは秘密!と斉藤さんとの約束を守らなければなりませんので。ですので、敢えてここでは話しません。
ただ、かんちがいだっていいじゃん!と強く笑う斉藤さんと、その斉藤さんを愛し、遊ぶ"キミ"が見れたことは間違いありません。
もしライブハウスツアー、どこか都合つくよ!興味あるよ!って方は、一度足を運んで見てほしいなって思います。
もちろん熱中症に気をつけながら、ですが大丈夫。斉藤さんもいるし、スタッフさんもいるし、"キミ"もいます。大丈夫。
だから安心して飛び込んで欲しいなと思います。
色々語りましたが、なんだかお腹が空いてきましたね。やっぱりここは日高屋で麺を食べるべきでしょうか。斉藤朱夏さんも誕生日を迎えたわけですし。
次のライブへ向けて、栄養を蓄えておきましょう。
かんちがいだって、世界一最強な私たちになるために。
P.S. 斉藤朱夏さん、お誕生日おめでとうございます🎉貴方の向かう先の景色を、これからも一緒に見ていきます。