さらいんは、朗らかに笑った。
必ずかの作品、1年365日、入学から卒業までの限られた時間のなかで、彼女たちと喜び、悲しみを共にし、同じ青春を過ごす、リアルタイム「スクールカレンダー」連動プロジェクトに向き合ってはいけないと決意した。
さらいんには、蓮ノ空がわからぬ。
さらいんは、オタクである。伊波さんを追い掛け、岬なこさんを応援して来た。けれども蓮ノ空に対しては、人一倍逃げようと心構えていた。追うことをしてしまえば、もう……後には引けない人間だからだ。
きょう未明、さらいんは座談会企画を立て、2日という時間を確保し、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブのストーリーを読もうと画面の前に座した。
さらいんには金も、知識も無い。時間も無い。ただ沼に落ちていく力と企画しちゃおう、えい、というバカな頭を持っているだけだ。
企画はただのきっかけに過ぎない。
司会進行を務めるからには、きちんと学ばねばならぬ。そう思い立っただけだ。
それが命取りであった。
まんまと、蓮の泥沼にハマっていったのである。
手のひらをくるっと返す勢いで、急下降していった。ジェットコースターも顔負けの速さである。
最初は、ほんの気まぐれであった。
ほぼ10分で分かる蓮ノ空のストーリーを手始めに触れていたのである。
狂った。大いに狂った。
王道のスリーズブーケに、先輩と後輩という尊い関係に横転したのである。それから、DOLLCHESTRAを視聴した。
更に横転し続けた。先輩に対して対等であろうとする後輩の姿に、悶えた。最後にみらくらぱーく!を流し、そこで意識は途切れた。
幼馴染の先輩後輩、というこれまでにないストーリー展開に、脳内処理が追いつかなかったのである。
何故だ。何故なのか。分からぬ。
さらいんは、理解し難い感情を抱えた。
村野さやかに異様に惹かれたのである。
どこまでも献身的で、真面目な彼女が、先輩へ向かって啖呵を切る姿がカッコイイと感じたのだ。「特等席、空いてます」と言うのはズルすぎるだろう。
乙宗梢先輩にときめいてしまったのである。
職場にこずえ先輩がリアルにいるだけに、花帆の気持ちが分かってしまったのだ。先輩が好きすぎる気持ちに共感してしまい、梢先輩と呟く亡霊と化したのだ。
気付いたらストーリーを全て追い掛け、楽曲を聞き漁り、過去のライブ映像を見るまでになった。実に10日間の出来事である。
丁度開催されていた東京公演は、冬コミの原稿並びに岬なこさんのメッセージブック企画を立てていただけに参加は叶わなかった。
さらいんは、誓った。
もう企画で、現地に行けないということは無くそう、と。
ならばいつ蓮ノ空へ会いに行けばいいのだろうか。
そうだ、異次元フェスがあるではないか。そう、さらいんは素直に己の感情に従おうとした。
……否、それは本心ではない。
1stライブは、1度きりしかないのだ。その瞬間を目撃しなくてどうする。どうするのだ。
じゃあ……愛知へ行こうか。
「ふはははははははは。やってきたぞ、蓮の沼ぁぁぁぁぁぁああ」
……あの、本当に待ってください。そんな目で見ないで。いや、何ですか、その腫れ物を見るような目は。
う、自覚はあります。ありますよ。うん。
めっちゃこいつ沼るやんけ。ってTL見てた方々は分かりますよね?
本当に一瞬で沈んで言って、なんなら布教する側になっちゃったレベルなんですけども。
いやぁ、うん、来ちゃいましたよ。愛知。
囲んでくれたオタクたち、見てる〜〜〜ー?????
……対戦、よろしくお願いします。