仄かに薫る真夏の匂い。照り付ける日差しの眩しさから逃げるように手を翳し、日陰を目指して急ぎ足で歩いた。
「今日も暑いな……」
独り言は。喧噪に消えていく。待ち合わせの喫茶店は、もう目と鼻の先だった。コーヒー豆の独特のフレーバーに、否応なく鼻孔が擽られる。堪らない、といった表情を浮かべそうになるが、ぐっと堪えて扉を開けた。
カラン、カラン。
「いらっしゃいませ。おひとりですか?」
「いえ、待ち合わせをしていて……」
店員の温かい申し出をやんわりと断り、店内を進む。バケットハットを被った女性は……といた。スマホとにらめっこしながら、何かを書いているようだ。
「こんにちは。さらいんさんでお間違いないですか」
「はい、初めまして。さらいんです。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
軽い挨拶を交わし、「失礼します」と了承を経て席へと着く。どうやらさらいんさんは、クリームメロンソーダを頼んでいたようだ。私も通りがかりの店員を引きとめ、アメリカンコーヒーを頼んだ。
ーさて、改めまして本日は取材に応じていただきありがとうございます。飲み物が届くまでに今回のこの取材の趣旨についてお話しますね。
「よろしくお願いします!」
ー今回の取材は、企画のひとつでして……題しまして「My Favorite Liella! Costume」好きなLiella!の衣装についてゲストさんにお聞きし、より衣装のことをゲストさんにも、そして読者の皆さんにも好きになってもらおうという企画です。原宿を散策しながら「自分の好きな衣装」について考えていた時に企画を思いつき、こうして始めた次第です。まずは第1弾、DAY1ということで……最近とある方にガチ恋をしているさらいんさんをお迎えして、雑談を交えて色々と質問させてください。
「ガチ恋って(笑)紹介が雑すぎませんか(笑)」
ーアッ。し、失礼しました……。でも、あながち嘘ではないですよね?
「……返す言葉もありません。」
ー(笑)それでは準備運動がてら、簡単な質問をさせていただきます。さらいんさんの好きな食べ物は何ですか?
「本当に準備運動をしている気分ですね。私は、チョコレートが大好物でして……特に、アルフォートが大好きです。まず、安い美味いのコストパフォーマンスの高さに惹かれます。ですが、もうこの季節になると……悲しいことになるので、あまり食べません。」
ーこの暑さだとチョコレート類が悲惨な結末を迎えそうですね。では、好きな言葉は何ですか?
「『できるできないじゃない。やるかやらないかだ』です。中学生の時に、スランプに陥っていた自分にお姉ちゃんが掛けてくれた言葉です。バレーボール部に所属していたのですが、2段トスであがるスパイクが打てなくなってしまって。そんな時に、お姉ちゃんが言ってくれたこの言葉で、迷いが吹っ切れました。」
ーお姉さんがいるんですね。なんだか仲が良さそうに見えます。
「2つ上なので。友達に近いのかもしれません。よく遊んでくれて、身長が高くて、バレーも上手くて……ってなんだか姉自慢しそうなので、ここで止めておきます。」
ーふむふむ、さらいんさんはシスコンっと。
「ちょ、いや、あの、違いませんけども……っ!」
ー素敵な関係だと思いますよ、ふふっ。では、少しずつ関係のある質問をさせていただきます。『ラブライブ!スーパースター‼』の推しは誰ですか?
「嵐千砂都ちゃんです。はじめは、澁谷かのんちゃんが好きだったんですけれども、いつの間にか彼女の隣に立つ女の子に目が行きました。キャストは、岬なこさんです。最近ずっと狂わされているくらいには、今考えている女性声優さんです。」
ーそれは、もう恋なのでは……?
「恋ですね。ガチ恋ってやつです。そう言うとふざけているように見えてしまうのですが、千砂都ちゃんの好きなところは、自分にストイックなところ。かのんちゃんができないことをできるようになる、と宣言したところは痺れました。」
ー1期6話「夢見ていた」のシーンですね。あのシーンは、私も全身鳥肌が立ちました。
「わたし、かのんちゃんの出来ないことをできるようになる。かのんちゃんの歌みたいに大好きで夢中になれるもの、わたしも持てるように頑張る!」
「岬なこさんに関しては、兎年という彼女の発言から狂わされました。こんなにも愚直に、真っすぐに向き合う人間は、他に1人しか知らなかったので。同年代に近い方がいると燃えますね。記事でも書かせていただきましたが、一緒に走っている感覚です。」
「お待たせいたしました。アメリカンコーヒーです。」
ーありがとうございます。丁度いいタイミングで届きましたね。このコーヒーのように熱いパッションで、岬なこさんへの愛を叫んでいるわけですね。では、好きな曲は何ですか?
「好きな曲……1つって言われるととても難しいのですが、最近聴いている曲は『水しぶきのサイン』ですね。」
ーTVアニメ2期ED「追いかける夢の先で」のカップリング曲でもあり、ツアーではアンコール後に披露された楽曲ですね。どうしてこちらの曲を選んだのでしょうか。
「イントロから好きでして……こう、サビにかけて徐々に疾走感が増していくところが凄く好きです。大熊さんが”袖をめくればもう日焼けのライン”と、自分のTシャツをめくる仕草が堪らないです。歌詞も胸打つ言葉が多く、真夏が過ぎ去る切なさをこれでもかと表現した至高の1曲とも言えます。」
ー段々インタビューのような会話になってきましたね。本楽曲は、アンコール直後での披露。ということは、さらいんさんの推しの岬なこさんの髪型は……
「下ろしてますね。さーっと髪が風に靡く姿がとても綺麗で。より切なさを助長しているようにも感じます。また、岬なこさんのキレのあるダンスが好きなのですが、一番好きな振り付けは、2番サビの”いつの間にか傾きだしている"でメンバー1人ひとりが傾く振付をして、”陽射しもほらいそいで!と急かしてるよ”のあたりでなこさんから背中を押されたように崩れていくLiella!メンバーのパートが好きです。」
ーカウントずれというか、なんと言いますか。さらいんさんが仰っている気持ちが、なんだか分かります。さて、ここからは本企画の趣旨でもある『Liella!の好きな衣装』についてお聞きしたいと思います。さらいんさんが一番好きな衣装は、何ですか?
「私が一番好きな衣装は、TVアニメ1期OPの『START!! True dreams』です。」
ー意外な衣装ですね。てっきり「Sing!Shine!Smile!」の衣装かな、と思っていたのですが……
「よく『Sing!Shine!Smile!』については話す機会も多いので、今回は同じくらい好きな衣装でもある『すたどり』について語らせてもらおうかな、と思い挙げさせていただいました。個人的には、曲に引っ張られてしまっているところはあると思いますが……。」
ー1期と言えばまだ5人だった頃ですね。MVとしても『明治神宮球場』という華やかなステージでの演出も相まって、印象深い楽曲でもあります。始まりの曲としても、よく歌われれているな、と感じます。
「そうですね。1stライブツアーではもちろんですが、『カウントダウンラブライブ』でも着ており、個人的には『DREAMY COLOR』と並んで大優勝でした。激推しポイントは、スカートです。」
ースカートですか?
「はい。くるりと回った時に、ふわりと広がるあの衣装が凄く好きで。まるで空を飛んでいるかのような、雄大さを感じるワンシーンです。カメラのカットも、絶妙ですよね。」
ー確かに。華やかに見せるために、上からのアングルを撮ることで、スカートの広がり具合を感じることができますね。
「片側が長めになっていて、アシンメトリーなシルエットも綺麗だなぁと感じていて。ヘムスカートって言うんでしょうか。そういう非対称に魅力を感じる人も多いと思います。」
ー対称的なデザインではなく、敢えて非対称にすることで、人の視線を惹き付ける。これまた衣装デザインの幅が広がりますね。
「そうですね。あと、千鳥格子の模様というのもポイントが高いです。千鳥柄って、よく見かけるのですが、”千の福を取る”として験担ぎされているそうで。千の鳥が飛翔するイメージから”勝負運に強い”とされていて、縁起の良い吉祥紋様でもあります。ですので、未来で優勝するLiella!の姿を映し出した証でもあると私は思います。あとは、単純に赤い衣装って映えますね。」
ー赤は、縁起の良い色ですからね。これから先も飛躍していくLiella!がとても楽しみですね。その他に好きなポイントなどありますか?
「細かな飾りとかでしょうか。帽子もタッセルの付いていて中華風な衣装にも見えます。衣装担当でもある上海出身の可可ちゃんの要素が沢山詰まっているようなデザインに感じられます。よく見てみるとメンバーが腕に着けているものと、袖の部分が違います。」
─そうなんですね!詳しく聞いてもいいですか?
「かのんちゃんは、指輪を中指にしていて、袖はキュッと締まっています。この部分は、可可ちゃんも一緒ですね。」
「袖はかのんちゃんと可可ちゃんと一緒でも、腕は指輪ではなくバングルを着けているのが特徴的です。」
「千砂都ちゃんは、袖がフリルのようになっていて、腕にメンバーカラーのミサンガを着けていますね。」
「指輪をしているのはすみれちゃんも一緒で、肩出しの袖は恋ちゃんとお揃いです」
「恋ちゃんは唯一、誰とも被っていなメンバーカラーのリボンを腕に身につけています」
ーメンバーによっても、微妙に似ていたり似ていなかったり……という良さもあるんですね。
「そうですね。他にもかのんちゃんと千砂都ちゃん、恋ちゃんが左側に、可可ちゃんとすみれちゃんが右側に帽子を被っています。赤いサッシュとスカートで見ると、右肩から左足にかけてかのんちゃん、千砂都ちゃん、可可ちゃんは伸びていて、左肩から右足に恋ちゃん、すみれちゃんは伸びています。かのんちゃんと千砂都ちゃんの幼馴染コンビが唯一お揃いなわけですね」
ーそれは、かのちぃってやつですか。
「かのちぃってやつです(笑)Aqoursの『青空Jumping Heart』も千歌ちゃんと曜ちゃんの幼馴染2人だけが水色なので、ラブライブ!シリーズは幼馴染に対する思い入れが相当強いように感じられます」
ー熱い語りをありがとうございます。これまで衣装の話を沢山してきました。5人だったLiella!は9人となり、11人になるわけですが心境はいかがですか?
「5人だった時代をきちんと追い掛けていたわけではないので、9人になった時には傍らで眺めているような立場でした。新年明けて3rdライブツアーの千葉公演、そして3月に声出しが解禁されてのベルーナドームでのライブに参戦させてもらい、9人から沢山のパワーを貰いました。そんな中で、3期生が入るというのは拒絶反応があったかと言うと、そうでもなくて。寧ろどんな化学変化を起こしてくれるのだろうと楽しみでいっぱいです。」
ー化学変化、と言いますと、今後さらいんさんの未来はどのように化学変化していくのでしょうか。
「いつかLiella!に向けて何かやりたいな、という気持ちは多いにあります。Aqoursを追い掛けながら磨いてきたものを、今度はLiella!にも贈りたいと思っています。あ、でも……嵐千歌都ちゃんと岬なこさん推しは変わりません。絶対に。」
ー揺れない覚悟を感じますね。4thライブツアーは参戦予定ですか?
「全通とは行かなくても各ユニットそれぞれは行きたいと考えています。アニサマでのVIP席でLiella!のパフォーマンスを見ることが出来るので、すごく楽しみです。11人になったLiella!のパフォーマンスが、どのように見えるのか……早く夏がやってきてほしいです。」
ーまさしくLiella!と駆け抜ける夏になりそうですね。それでは、さらいんさんにとって『ラブライブ!スーパスター‼』とは何ですか。
「とても難しい質問ですね。うーん、”新しい出会い”を教えてくれる”物語でしょうか。ずっと一つの作品、アーティストを追ってきた私にとっては凄く新鮮な気持ちで見れていて。体感的には、1月から追いかけ始めたと思っているので、応援を始めてから半年も経っていないんですよね。なのでこの世界で私は初心者みたいな感覚でいるので、目に映るものすべてが新しい出会いとの連続です。この気持ちを忘れずに、これからも駆け抜けたいと思います。」
ーそれでは最後にいつも一緒に駆け抜けている読者の皆様へメッセージをお願いします。
「ここまで見ていただき、そして駆け抜けていただきありがとうございました。ふらふらと道草をしながら、ただ”好きだ”という気持ちを表現しているにすぎません。それが「いいね」「おもしろい」と企画に賛同してくださったり、語り合ってくださったり……まだまだ皆さんが走ってきた道を辿っているような感覚です。これからも自分のペースで追い掛けていきます。いつか皆さんと道が交わった時は、よろしくお願いします。」