「ほら、言ってごらん?」
背中を押すように揺れる羽根。
小さな星の輝きが、いつの日か誰かを照らす星になることを願って、今日も彼女たちは夢で息をする。
始まりの歌声は、君の空に響く。
はじめに
「ラブライブ!スーパースター!!」をぼんやりと見ていたら、感想ブログを書きたくて、書きたくて……気付いたら筆を取っていました。
これが熱量なのかなって思います。
さて、長々とした前置きはさておきずっと前に書き続けていたアニメ感想記事の書き方を土台にして、今回は「ラブライブ!スーパースター!!」TVアニメ#1「まだ名もないキモチ」について語っていこうと思います。
皆さんが気になっていると思われます「カタ語る」とは、パソコンのキーボードを打つ音が「カタカタ」しているのと、「語る」をかけて、「カタ語る」という意味です。
それではさっそくまだ名もないキモチについて考えていきたいと思います。
イントロ
ほんのちょっぴり悲しいときなら~♪
背筋伸ばして声を飛ばせば~♪
屋上でギター片手に弾き歌いをするかのん。「ラブライブ!」と言えば、歌。歌と言えば「ラブライブ!」と言っても過言ではありません。
胸が高鳴って、心臓の爆音しか聴こえないこの感覚。これが「ラブライブ!」なんですよね。
「すご~い!」
「きれいな声~!」
快晴の空に響くかのんの歌声は、同級生の心をも動かしていました。心の底から歌が大好きだという想いが、このワンシーンからひしひしと伝わってきます。
「私の名前は澁谷かのんです!5月1日生まれ。家族は父と母と妹とコノハズクのマンマルです。好きな食べ物は焼きリンゴとトマトとハンバーグ。夢は新設された結ヶ丘女子高等学校の音楽科に進み……」
クラス内でここまでハキハキと言える人は、この世界に沢山はいないと思います。後ろの黒板に書かれた「My Dream」という字を見る辺り、自己紹介か総合的な学習の時間かなぁ……と思ってしまうのは、職柄かもしれません。
「歌でみんなを笑顔にすることです!」
溌剌と話していた場面から一転して、スポットライトに照らされたガチガチのかのんが映し出されます。その急展開に視聴者も驚かされたことでしょう。
「が、外苑西中学の…澁谷かのんです…」
「では課題曲の独唱から」
「は、はい!」
表情からもひしひしと緊張が伝わってきます。そんな状態で果たして歌うことは出来るのでしょうか。見守る私たちの心にも不安が湧き上がります。
前奏がゆったりと流れ、さぁ……というタイミングで声を出すことができないかのん。かのんの夢は、歌でみんなを笑顔にすること。ですが、どうでしょうか。その一歩すらも彼女は踏み出すことができません。
「バーカ!歌えたら苦労しないっつうの!」
口調の悪さと言い、メガネスタイルといい、これまでの印象がガラリと変わりましたね。彼女に対して私は、「ごく普通の高校生であり、あまり前に立つタイプでもなく、優しくて少し控えめな女の子」という想いを持っていました。
ですが、どうでしょうか。
「もう!いるんだったら返事してよ!」
「あ〜」
「今日入学式でしょ!?遅刻するよ!」
「分かってま~す」
「早く!」
「は〜い」
実際の彼女は、こんなにも荒々しい。この姉妹での会話のテンポ……とても好きです。
こういう子を待ってたんですよ。どこか男勝りっぽさもあるような、グレてる感じが堪らないです。(オタク早口)
「いってきま~す」
「おはようは?」
「おはよう」
「朝御飯いいの?」
「うん」
待って。待って。それ、朝の私じゃんかよ……と思ったのは秘密です。皆さんは、きちんと挨拶をしましょうね、母親に締められます。笑
ただ、このかのんの気持ちもすごく分かるのです。朝から気分が乗らない時というのは、挨拶もしたくないし、ご飯すら食べたくもない。
ほんの数ヶ月前に、似たようなことを実際に経験していたからこそ、より一層ここのワンシーンが刺さりました。
「マンマル、いってくるね」
家族に向ける顔とコノハズクのマンマルに向ける顔が全く違うのもポイントだと思います。
マンマルなら自分の気持ちを分かってもらえる、この子だけが私の心を満たしてくれる。そんなかのんの気持ちが表れたシーンじゃないのかな、と思います。
「かのん、似合ってるわよ制服」
「似合ってない!」
「まだ受験の失敗引きずってるの?」
「繊細だから…」
母親からの何気ない一言は、当たり前のようにも見える言葉ですよね。娘が新しい制服に身を包み、新しい生活を始めるわけですから、当然です。ですが、かのんにとってそれは全くの逆で、失敗してしまったことがずっと残っているのです。
「繊細だから……」という言葉が、よりかのんの内面を表していますね。繊細だからこそ、人前で緊張して歌えなくなっていたのですから。
「よし!これで何も聞こえない」
外界から音をシャットアウトするかのようにヘッドホンをするかのん。煩い小言も、期待も、全部全部、今のかのんにとっては騒音でしかないのかもしれません。
舞台となる原宿。ストリートで音楽を奏で、街行く人が足を止めては、動き出し……そんな大都会の様子が表された場面でもあります。その中に1人、小さな星が紛れていますね。
「おはよ~。春休みあっという間だったね~」
「そう?私早く結ヶ丘に通いたくてずっとうずうずしてた~!」
「アハハハッ、やっぱり音楽科受かる子はすごいな~。それに制服も似合ってる~」
「ありがと。かのんちゃんも」
「普通科の制服もかわいいよね」
「そ…そう?アハハハ……」
道中、バッタリと同級生に会ってしまったかのん。どことなく後ろめたさを感じている様子が伺えます。
対照的に音楽科に受かった2人は、新しい学校へ通えることを楽しみにしていました。
この2つの境界線が目に見える形で分かるのが、制服の色というわけですね。
「あ、あの猫最近よくうちに遊びに来るんだ。じゃあまた!」
かのんの歌声を、同級生も高く評価していました。その期待に応えられなかった、という部分も少なくともかのんの心を苦しめているものの一つかもしれません。
そんな気まずい雰囲気を避けるかのように、よくお店に来る猫の元へと駆け出すかのん。
「ありがとう。君のおかげで助かったよ」
そう猫に笑うかのん。動物愛の深い行動を見ていると、本当の彼女の心が見えてきます。
猫とは反対に、日陰にいるかのんの姿は、彼女の後ろめたさを表現しているのかな?と思います。日向に出る時には、必ずヘッドホンを被り直す。誰かと会わないように、誰かに見られる前に……。
そんなかのんにとって、歌を歌うことは自分の世界を構築することなのかもしれません。誰にも見られない裏道で、高らかに気持ち良さそうに歌う彼女の姿には、どこか人を魅了する力があるのかもしれません。
(驚きすぎでは……これがラブライブ!)
Aメロ
「はぁ…。何でもない時はいくらでも声が出るのに…」
そう呟くかのんに突然飛び出してきた少女。中国語を話す彼女は、捲し立てるようにしてかのんに話し掛けます。
その勢いに呑まれ、怖くなったかのんはその場から猛ダッシュで逃げ出します。それを追いかける少女を見るというのは、なんともホラー映画にもなりそうな場面ではありますが、「これがラブライブ!ですから」の一言で片付けられてしまうと思います。
「ちぃちゃん音楽科の制服かっこいいね!」
「えへへへ~」
「せっかく合格したんだから頑張らないとね、ダンス」「うん。かのんちゃんも歌続けるんでしょ?」
「私?私は…」
逃げ込んだ先で出会ったのは、幼馴染の千砂都。かのんとは対照的な制服を身にまとっています。千砂都は、ダンスという部分で音楽科へと進んだようです。ということは、彼女がもしや……という発想に辿り着きますね。
「新しいこと始めるのもいいかなって。ほら受験前に言ったでしょ?合格しなかったら最後にするって諦めるって」
「でも私はかのんちゃんの歌、聴いていたいけどな」
千砂都との会話の中でも、受験に関する話題が生まれ、気持ちが沈むかのん。そんな彼女に、一言「歌、聴いていたいけどな」という千砂都の声は届いていたのでしょうか。幼馴染の声でさえも、今のかのんには届かないのかもしれません。
「このような形で第一回生を迎えることができたことを心よりうれしく思います。ご存じの方も多いと思いますがこの学校はもともとは神宮音楽学校でした。この地に根づく音楽の歴史を、特に音楽科の生徒は引き継ぎ大きく羽ばたいていってほしいと思います」
新設校ということもあって、上の学年はいない1年生だけの学校と言うのはなんとも新鮮ですね。そんな中で、普通科と音楽科という境界線が引かれていることがこの先の物語でどのように関わってくるのかが気になります。
この「音楽科」と「普通科」と存在が、明確に分けるという役を担っていますね。どちらが上、というわけではありませんが、理事長の発言からしてもかのんがより「音楽科」に対して苦手認識が高くなってしまうのは仕方がないと思います。
「外苑西中学から来ました澁谷かのんです。えっと……ひぃっ!」
「スバラシイコエノヒト…」
「ゆ…夢は猫を飼うことで~す」
自己紹介をするクラス内には、朝かのんを追い掛けていた少女もいました。かのんは、既に彼女に対しては「恐怖」という目でしか見ていませんよね。
「平安名すみれです。よろしく」
ツンとしていて、淡々と名前だけを話すすみれ。試聴動画とは全くの別な印象を受けたので驚きましたね。
「はじめまして。上海から来ました唐可可といいます。お母さんが日本人デス。ところで皆さんはスクールアイドルに興味ありませんか?可可は皆さんと一緒にスクールアイドルがしたいデス!」
かのんを追い掛けていたクゥクゥは、唐突に「スクールアイドル」への勧誘を始めます。まるで、どこかの太陽みたいに輝く笑顔の女の子のようですね。
完全にロックオンされたかのんは、クゥクゥから逃げるようにして教室を離れます。そんな彼女を追い掛けるクゥクゥは、めげずに勧誘活動を続けていたのでした。
「皆さんはスクールアイドルに興味ありませんか?スクールアイドルに興味ありませんか~!?クゥクゥは皆さんと一緒にスクールアイドルがしたいデス!一緒に始めてみませんか~?」
そんな活動を見かけるかのんは、バレないうちに逃げようと試みましたが……
「怖い怖い~!」
「待ってクダサ~イ!」「怖い怖い怖い怖い怖い~!」
「待ってクダサ~イ!」
結局、バレた後に追い掛けられることに。クゥクゥの諦めの悪さを感じると共に、それだけかのんの歌声に魅了されたということが感じられますね。
「かのんさんの歌はすばらしいデス!なのでクゥクゥとスクールアイドルを始めてみませんか~?」
「スクールアイドルって…学校でアイドルってやつでしょ?」「スクールアイドルがやりたくて日本に来ました!かのんさんの歌はすばらしいデス!是非私と一緒にスクールアイドルを…」
勢いで話してしまったクゥクゥは、はっと我に返り、改めて自己紹介と勧誘を続けるのでした。そんなクゥクゥの言葉を聴いても、どこか遠慮がちなかのん。
それでもクゥクゥが引き下がることはありません。なぜなら、彼女は知っているから。
「歌がお好きなんでしょう?」
「嫌いじゃ……ないけど……」「絶対好きデス!クゥクゥ分かりマス!だからかのんさんと一緒に始めたい。そのすばらしい歌声を是非スクールアイドルに…」
かのんの歌声を聴いたあの瞬間から、かのん自身が歌がとても大好きであることを見抜いたクゥクゥ。留学生の行動力と言い、洞察力と言い、何故こうも鋭いのでしょうか。
「このチラシを配っているのはあなたですね?勝手にこんな勧誘を…。理事長の許可は取ったのですか?」
「あ…すみません。クゥクゥはただスクールアイドルを始めたいと思いまして」
そこへやって来た音楽科の生徒。腕章をしている所を見ると、新設されこの学校で生徒会か役員を担う生徒でしょうか。どことなく「認められないわ」と肩肘を貼っている会長に似たものを感じますね。
「勝手なことをしないでほしい」と話す彼女に対して、かのんが口を挟みます。
「ちょっといい?いきなりそんなこと言ったらかわいそうなんじゃないかな。海外から来たばかりなのに」
「あなたは?この生徒と関係があるのですか?」
「関係…まぁなくはないというか…」「それならあなたにも言っておきます。この学校にとって音楽はとても大切なものです。生半可な気持ちで勝手に行動することは慎んで下さい」
「生半可かどうかなんて分からないでしょ!なんでスクールアイドルがダメかちゃんと説明してあげなよ!頭ごなしにダメだなんてかわいそうでしょ!」
「ふさわしくないからです」
「ふさわしいって何?スクールアイドルのどこがふさわしくないっていうの?」
「少なくともこの学校にとっていいものとは言えない」「どうしてそんなこと言い切れるの!?」
音楽科の生徒の言い分に納得のいかないかのん。こういった所が、彼女の芯の強さだと思います。
誰かが何かを始めようとして、それを理由もなしに頭ごなしに否定する。その点に納得がいかない。それは、かのんが歌を大切にしているように、クゥクゥの大好きなスクールアイドルを尊重している証拠でもあると思うのです。
「あなたはどうなの?」
「え?」
「あなたもやりたいのですか?スクールアイドルを」「私は…」
「とにかく今日は帰って下さい。音楽科の生徒の邪魔にならないよう」
核心をつくような問いを投げ返されて、言い淀んでしまうかのん。音楽科の生徒にとって、「スクールアイドル」と言うのは、不必要なものと考えられています。
「ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow」で、梨子はこんな話をしていました。
「スクールアイドルって他の部活に比べて、誤解されやすいと思うの。 ステージ上ではいつも笑顔だから、真剣さが足りないように見えるし、 楽しそうにしてるから、遊んでるようにしか見えない時もあるし……」
きっとそう思われてしまっているのかもしれません。その裏側で、どれほど努力しているか、そのステージだけでは伝わりにくいのかもしれませんね。それは、「ラブライブ!スーパースター!!」でもまだ残っている「スクールアイドル」に対しての考え方です。
「でも実際は、歌いながらダンスして、辛そうだったり不安そうに見えたら、 見ている人も楽しめない。絶対そういうところは見せないようにしないといけないし、 諦めずに伝えていくしかないと思う」
そう語る梨子の言葉を考えると、今後2人が歩む道は高く険しい壁がそびえ立っているのかも知れません。
「私ね、音楽科の受験落ちたんだ。大好きなんだけどね。きっと才能ないんだよ。だからもう歌はおしまい」
クゥクゥに自分の気持ちを吐露するかのんのシーンは、胸が締め付けられました。
「才能がない」
その一言で、人は簡単に物事を諦められてしまう。そんな人がこの世の中にはきっと沢山いて、かのんもその内の1人になるだけでした。
大好きな気持ちに蓋をして、才能がないという理由を付けて終わりを告げようとする。その気持ちに、共感する自分と「いや、まだだよ!!!」と叫ぶ自分もいました。
「おしまいなんてあるんデスカ!?」
「えっ…」
「好きなことを頑張ることにおしまいなんてあるんデスカ!?」
第1話で1番印象に残った言葉は何ですか?と聞かれれば、10人中8人くらいは答えると思いたいのですが……それくらい衝撃的な言葉でした。
「好きなことを頑張ることにおしまいなんて……」という言葉に、私はハッとさせられました。
至極当然のことを言っているだけかもしれません。ですが、それを貫くことが難しいからこそ何かに理由をつけて辞めようとする。
それでも、それでも……心のどこかでその言葉は巡っていると思います。
私もそうです。
社会人となって、趣味に費やす時間は圧倒的に減りました。それでいて、このままでいいのかと考えました。大好きなラブライブ!から離れようかとも思いました。
ですが、やっぱりおしまいにはしたくない。
ブログもそうです。この先、何本書けるか分かりません。それでも、書きたいんです。私が、私自身が書きたい!!って叫んでる。
だから、今こうして筆を取っています。
Bメロ
「あのね、やっぱり私はアイドルには向いてないと思うんだ」
「そんなことないデス。スクールアイドルは誰だってなれマス」「アイドル!?」
「あんたが!?」
「うるさいな!話聞かないで!」
コミカルかつテンポの良い合いの手とツッコミですね。これは、かのんがツッコミ担当という解釈で宜しいでしょうかね。
クゥクゥが何度も誘おうとしてはいますが、かのんはやはり前向きには考えることができない様子。
「かのんさんの歌声はすばらしいデス。朝出会った時”この人だ~!”って思いました」
「私を見たら分かるでしょ?アイドルって柄じゃないんだから」
「そんなことないデス!かのんさんはすっごくかわいいデス!」
「かわいい!?」
「お姉ちゃんが!?」
「も~!聞かないでって言ってるでしょ!」
実の娘に対しての褒め言葉、素直に受け取ってあげてください、親御さん……と謎目線になりつつも、どうしても頷くことが出来ないかのん。そんなかのんがクゥクゥに質問をしました。
「歌わない?」
「ほらバンドとかだとボーカルの人以外歌わなかったりすることがあるでしょ?あれみたいに…」
「そういうグループもなくはないですが…。かのんさんは歌いたくないのデスカ?」
「歌いたくないというか…歌えない?」
「歌ってましたよ?すばらしい声で」
「あれはああいうところでなら大丈夫というか…」
それは、「歌わない」ということ。かのんは、歌うことに対して躊躇いがあります。歌わないのなら……と考えたのかもしれませんが、クゥクゥは更に彼女の内側に踏み込んでいきます。
そんなクゥクゥの純粋な言葉に触れて、彼女は自らの過去を話し始めたのでした。
「私さ、いざって時になると歌えないの。声が出なくなっちゃって……」
「そんな…」
「最初は小学生の時でね……それ以来 大切な時ほど声が出なくなっちゃって。中学も合唱部入ってたんだけど大会とかはダメで。この学校の受験の時も……」
それは、あがり症ということでしょうか。極度の緊張で、いつものパフォーマンスをすることが出来ない。それが続くことによって、平常な自分を保つことが出来なくなる。
所謂イップスと呼ぶべきなのか……それに近いものをかのんは抱えていることが伺えます。
もうひとつ、これは職柄の着眼点になると思うのですが、この教員素晴らしいですね。倒れた時、真っ先に駆け付けて、意識確認をしている所から経験を感じます。
と同時にクラスメイトたちもかのんを思いやる心を持っているのは、かのんの人柄だけではなく何かあった時はお互いに助けるように……という学級経営の方針が背景にあるからだと私は思います
「私、可可ちゃんに協力するよ。力になりたい。だからスクールアイドルに興味ありそうな子がいたらすぐ紹介する」
「ほんとデスカ!?」「もちろん!だって歌は大好きだから!」
「かのんさん…」
ここが辛いですよね。歌"は"大好きだから、という言葉が本当に辛いです。大好きなはずなのに、その大好きに縛られている。思うように広げることのできない羽根を、必死にばたつかせているかのんを見て、クゥクゥも切なげな表情を見せました。
かのんは、千砂都のバイト先にやって来ていました。千砂都にも「スクールアイドルに興味がある子はいないか?」と質問している辺り、本当に心の底から優しい子だなぁと思います。
「葉月…もしかして髪こうやって結んでる?」
「知ってるの?アハハッ!あの人私たちの学校をつくった葉月花って人の娘さんらしいよ」
「そうなんだ…」
葉月というのが、あのスクールアイドルを認めようとしなかった音楽科の生徒だと判明し、その生徒の特徴を表現するかのん。そんな幼馴染の姿に、笑いが止まらない千砂都というなんとも朗らかかつコミカルなシーンですよね。
道中、とある民家の下を通るとクゥクゥが発声練習をしている場面に出くわしました。
何かを感じ取るかのん。どんな時でも、ヘッドホンを忘れていない所も、彼女が心の底から音楽を、歌を愛している証でもあります。
「スクールアイドルかぁ…」
「ナナミちゃん無理」
「ごめんね~。歌はどうしても苦手で」
「ヤエちゃんも無理…」
「他にやりたいことあるんだ」
「ココノちゃんも無理」
次の日もめげずに勧誘を続けるかのん。しかし、思うように行かない現実が彼女たちを襲い掛かります。
「あの!」
「何でしょう?」
「お…同じクラスの平安名すみれちゃんだよね?突然なんだけどスクールアイドルに興味あったりしない?もしよかったら…」「私を誰だと思ってるの!?」
「ひぃ~!」
渡り廊下で見かけたすみれに話し掛けるかのん。誰にも臆することなく踏み込めるのは、彼女の良いところだと思います。
そんなかのんに対して、辛辣な言葉を返すすみれ。きっと彼女にも何か裏側がありそうですね。
「葉月さん…」
「見張っていマス」
「音楽好きな人が多いから何とかなるかもって思ってたけどアイドルはなかなか厳しそうだね…」
昨日の一件があってからと言うものの、まるでエンカウントを避けるかのような2人の立ち振る舞いに、クスッとなってしまったのは秘密です。
ですが、この新設校でスクールアイドルをやることが難しいというのは、これまでとは全く違う壁だと思います。
廃校、方向性の違い……とは違う、音楽に対する情熱という点が決定的に違うのかもしれません。
「かのんさん!やっぱり…やっぱりやってみませんか?スクールアイドル」
「え?」
「迷惑かと思って言うかどうか迷っていたのデスガ…クゥクゥ、どうしても…どうしてもかのんさんと一緒にスクールアイドルがしたい!」
思うように行かず帰路に着く二人。先を行くかのんに対して、改めてクゥクゥはスクールアイドルへと誘います。
それは、一緒にスクールアイドルの勧誘をしていて見てきたからだと思います。どれだけかのんが歌を好きなのか、歌を大切にしている……本当の心を知っているから、踏み込んでいけるのだと思います。
「だからそれは…昨日言ったでしょ。私歌えないから。一緒に歌えないんじゃいるだけ迷惑になっちゃうよ」
クゥクゥの誘いを断るかのん。
「かのんさんは歌が好きデス!歌が好きな人を心から応援してくれマス!クゥクゥはそんな人とスクールアイドルをしたい!」
そんなかのんをどうしても誘いたいクゥクゥ。
「無理だよ」
「お願いシマス!」「無理だって…」
「そんなことありません!」
2人の会話はヒートアップしていき……。
「あるよ!!!!」
ついにかのんは、クゥクゥの手を払ってしまいます。「ご…ごめん…」と唇を噛み締める彼女は、これまで隠し続けてきた本当の気持ちを晒します。
「がっかりするんだよ。いざって時に歌えないと。周りのみんなもがっかりさせちゃうし何より自分にがっかりする!そういうのもう嫌なの!」
「応援シマス。かのんさんが歌えるようになるまで諦めないって約束シマス!だから試してくれませんか?クゥクゥともう一度だけ始めてくれませんか?」
人が何かを諦める時、それは自分に期待できなくなった時かもしれません。自分自身には何も無い。この先、夢を叶えることも出来ない。
何より自分にがっかりし続けてきたかのんは、もうこれ以上心を傷付きたくはありませんでした。
彼女の目尻に浮かぶ涙。それは、悔し涙でもあり、辛い思いをずっと堪えてきたものが零れた瞬間だったかもしれません。
私、多分……なんとなくこの子と自分が勝手に似ていると思っているのですが……失敗を隠し続けるような子なんですよね。
他人の前で自分の素直な気持ちを吐き出すことも、何か理由をつけて諦めようとする所も……すごく分かります。
「いいの?私の歌を大好きって言ってくれる人がいて」
再びかのんはヘッドホンをして、外からの音をシャットアウトしてしまいます。自分の気持ちに蓋をするようにして、自分の世界へと閉じこもってしまいました。
「一緒に歌いたいって言ってくれる人がいて」
ですが……私は、このヘッドホンをするという行動が、閉じ篭もるためではないと思いたいのです。
「なのに本当にいいの?」
私は、自分と向き合うためにこのヘッドホンをしているのではないか?と思うのです。周りに流されない、周りを気にしない。
それは、自分との対話。
自分の心と向き合うためのひとつのツールが、このヘッドホンだったんじゃないかと思うのです。
「本当にこのままでいいの?」
そう最後に自問自答をするかのん。そして……彼女は、決めました。
誰かに呼ばれたからでもない。
誰かに引き止められたからでもない。
可哀想だから、と思ったからでもない。
自分自身に素直になったから。
だからこそ、自分から校門の先を跨ぐことをせずに振り返り走り出すことが出来ました。自分の意思で決めた瞬間に駆け出すこのシーンは、この先何度も私は思い出すでしょう。
「小さな頃からずっと思っていた。私は歌が好き。ずっと歌っていたい。歌っていれば遠い空をどこまでも飛んでいける。暗い悩みも荒んだ気持ちも全部力に変えて前向きになれる。いつだって歌っていたい」
空から舞い落ちてきた羽根。これこそが、ラブライブ!を繋げる羽根です。涙が止まらない演出に、私も涙が止まりませんでした。
そして、そんな羽根はかのんのリュックのポケットに入り込んで、揺れ動くのです。まるで……
「ほら、言ってごらん?」と。
どこからか分からない羽根には、不思議な力が宿っています。
ある時は、どんな時だって君を見つめているよ、と囁き、またある時は自分たちの色へと染まって、輝きへ向かって駆け出していく。
そして、今回は……素直な気持ちを言ってごらん、と後押しするような、そんな彼女たち見守るような存在に、かのんもまた素直な気持ちを言葉にしました。
「やっぱり私…歌が好きだ!」
思いの丈を叫ぶ彼女の瞳は、なんと天晴れなのでしょうか。ここから続く挿入歌「未来予報ハレルヤ!」に関しましては、また改めて語りたいと思うので割愛させていただきます。
「かのんさん!スバラシイデス!」
「もしかして私…歌えた!?」
誰よりも自分が歌えたことを驚いていたのは、かのんでした。嬉しさよりも驚きが勝るというのは、それだけ自分が歌えたことの実感を持てていないということでもあると思います。
ですが、ここからラブライブ!は始まりました。この第1話を経て、第2話、第3話……とひとつひとつの小さな星を照らしながら、繋がっていくことでしょう。
いつか5つの点を結び、線となり、星になることを願って。
間奏
間奏、というのはちょっとしたお話みたいな感じで、私が気になったことを話していく部分です。
今回は、なんと言ってもこの粋な演出だと思います。
まずは、路上に書かれた「Lovelive!Superstar!!」という文字。
原宿、表参道の辺りを舞台としたこの作品ならではのお洒落な演出だと思います。
続いては、バスの行き先に映し出された「#01まだ名もないキモチ」でしょうか。
「ラブライブ!サンシャイン!!」の時も、このような演出はありましたが、各話タイトルがこのように出されることはありませんでした。
遊び心あるこの演出が、今後の話に合わせてどのように変わっていくのかとても楽しみですね。
アウトロ
はい、ということでここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
本当に久々にアニメ感想記事を書いたので、グダグダしてしまった感はありますが、書きたいことは書けた気がします。
以前のように1週間に1本ずつ上げられるか分かりませんが、出来るだけ追い掛けて行きたいと思います。これが私のやりたいこと、素直な気持ちです。
次回も楽しみですね。あっという間に時間は過ぎてしまいましたが……それでは今回はここら辺で失礼致します。
次回「スクールアイドル禁止!?」
画像出典・セリフ引用
ラブライブ!スーパースター!! 第1話「まだ名もないキモチ」より