今日も一日終わった、と肩の力を抜く。
息も吸うのがやっとなくらい濃密な一日を過ごした後は、いつもこうだ。
つい先日までずっと笑っていたと言うのに、今はどうだろうか。
束の間の夏休みの休息のはずが、どこか気が抜けない日々でもある。
頭の片隅には、ずっとこびりついて離れない仕事のこと。これがきっと社会人になるということか、と誰にも聞かれない程度の声量で呟いた。
今日はいつもより早く終わったなぁ……と空を見上げれば、青空に赤みがかった雲がかかっていた。まるでブルーアワーのようだ。
駐車場に停められた車の鍵を開け、乗り込んでエンジンをかける。もうルーティンになりつつある行動だ。
心地よい揺れと今から運転だ……という気持ちの狭間に、ほんの少しだけ癒しを求める。手馴れた動きで画面をタッチし、スマホスタンドに挟んでハンドルを握る。
信号待ちで見上げたヴィジョン
よく聴いていたメロディ
ふいに思い出すあなたのメッセージ
退勤の逢田梨香子さん、だなんて誰が言っただろうか。だが、とてもよく合うことに気付いたのは最近だ。
逢田梨香子さんを詳しくは知らない。
ネットの海で繋がった人たちの方がよっぽど知っているだろう。
しかし、4月からはそのネットの海でさえ潜り込むことが少なくなったようにも感じる。
そのはずなのに、変わらず暖かさがあるのだ。
そして、いつもその暖かさへ背中を押してくれるのだ、不思議と……この逢田梨香子さんだった。
走りながら覗く街並みに溶け込むように、彼女の歌が聴こえてくる。
カーテンに隠れ、そっと隙間からこちらを見守るような……そんな歌が。
時に暴力的で、でもどこか包み込むような歌声が木霊する。
大勢の人を笑顔にするような立ち回りをするのもきっと彼女の素であるのかもしれない。
それでも……どこか説得力があり、未来を見据えている彼女の言葉に、心を熱くさせられる。
「また逢おうね」と言えば、絶対に逢えると思っているし、10年先も……と笑えば、10年先も笑っているんじゃないか、ってそう思える。
ありきたりな日常に溶け込むそんな歌が私は好きだ。大好きだ。大大大好きだ。
あぁ、そうさ。これが逢田梨香子さんなんだ。
溢れてしまうこの想いをネットの海のみんなも爆発させている。これがきっと逢田梨香子さんが築いてきた、作り上げてきた世界。
愛に出逢える世界なのだろう。
愛だ。愛に溢れた世界はなんて幸せで心地よいのだろうか。
今日もまた抗うことの出来ない運命は訪れる。
それでも笑って立ち向かえるのは、愛に出逢える世界があることを知っているからだろう。
日常の裏側に潜む世界を知っているから、どんな小さな出来事さえもほんの少しの楽しみに、ちょっとの頑張りに繋がる。
お誕生日おめでとうございます。
そう、ふと呟いた。
きっと私の独り言かもしれない。
それでも、彼女にお礼を言いたくなった。
ありがとうございます。ここまで連れて来てくれて。